|
サンサンとふりそそぐ陽光…これが、イタリアで最後に訪れたサルデーニャ島の第一印象だった。
ミラノは、寒かった。はるばる日本からロンドンを経由して、やっと着いた私たちを迎えたのは、土砂降りの雨と雷。前途多難か・・?ミラノからヴェネチア・ローマと周り、楽しみにしていたサルデーニャ島へのフライトを2日後に控えた晩、夫の携帯にメールを発見。なになに・・?格安チケットをおさえて喜んでいたローマ→サルデーニャ島間のフライトが「運行停止になった」・・だって… え〜〜っ!?どうやら「格安」っていうところがいけなかったらしい。翌朝、夫はテルミニ駅(ローマ)内にある他航空会社のカウンターを歩き回り、なんとか替わりのチケットをゲット。ををっ、到着空港が変わってしまうぞ。妻は電話を片手に、手配していたレンタカーの出発場所を、アルゲーロからオルビアへと変更する。やれやれ…良かった、なんとか行けそう・・・
さて、とうとうやって来た、陽光ふりそそぐサルデーニャ島。
オルビア空港に降り立ったのは午後4時過ぎだった。レンタカーカウンターに行き、予約しておいたマイカーと対面する。「はじめまして。これから3泊4日よろしくね。」
サルデーニャ島は、シチリアに次ぐ地中海第二の大きさを誇る島だ。オルビア空港からめざすホテルまで、思った以上に高い峠を超えていく。左ハンドルを昨年のスペインでマスターした夫が、途中の山坂を軽快にとばしていく。なれない地名の標識を見落とさないように緊張しつつ走ること2時間半。ようやく今宵の宿、“l’Hotel la Marinedda”に到着した。写真で見てはいたが、想像以上に広い。テラコッタ色の屋根と壁につつまれたヴィラが連なっているのが美しい。部屋のベランダから見晴らせる景色のすばらしさ。そしてこの海の色!!白く輝く砂浜に暖かいエメラルド色の海が眼下に広がる。しばしベランダでぼーっとみとれる。
さて、夕食は7時半から。まだ明るい道を、お洒落した老若男女が思い思いにセンターハウスへと集う。夕日を愛でながらのフルコースは、この上なく優雅だ。ちなみに、私たちが訪れた5月初旬の「日の入り」は8時半くらい。前菜Antipasto、第1皿Primo Piatto、第2皿Secondo Piatto、デザートDolceと進むうちに、空もワインの色に染まっていく。新鮮な魚介、肉と野菜に工夫を凝らした料理に舌鼓を打つ。サルデーニャのワインはこの上なく美味しい。ワイン好きの夫婦(私達のことです)は、毎夕レストランで一本、部屋に帰ってまた別のワインと、さまざまな種類を楽しんだ。ああ、これぞ地上の楽園・・・
2日目、朝食前に海辺におりてみた。朝の光の中でまだ海も浜も乳白色に眠っている。2時間後、再びやってきた海辺は、すっかり色を変えていた。強い陽射しに誘われてエメラルドの水に素足をつけてみる。思いのほか冷たい。果敢に腰までつかっていく夫。そこから先なかなか進まないのは、しばらく前から海の中につかっている男性もいっしょだ。やがて一足先に泳いで戻った彼は、“Slowly!Slowly!”と夫に言って、砂浜に寝そべった。一方、海に入ることをあきらめた私は(まだ5月だし・・)午後はプールサイドで読書にふける。プールに注ぐ小さな滝のまわりで、3歳くらいの金髪の少女が父親とボール遊びをしているのが可愛らしい。そうね、ゆったりとしたこの施設は、カップルにも、小さな子ども連れの家族にも優しい。
夕方、車で近くの港町を訪れてみた。夏には釣りや海遊びの拠点として賑わうIsoraRossaの港。途中ヌラーゲとよばれる石の砦が海を見下ろしていた。古代サルデーニャ人は、地中海の外敵の襲来にこれで備えたのか・・急に時間が白くゆっくりと流れ始める。・・そろそろ夕焼けの予兆を感じさせる空の色・・黄昏が待ちどおしい。お腹もすいてきたなぁ。今宵のメニューは、朝の食卓でリストを見て注文済みなのだ。愉しみ。愉しみ。今日のワインは白にしてみようか・・・
3日目、海は凪いでいた。今度はすいすいと水に入っていく夫。私は岩の影を見つけて身を寄せる。目をつぶって潮の流れを聴くことが、どうしてこんなに心地よいのだろう。午後スパを体験する。タラソテラピーは初めての体験だ、豊富なメニューの中から私が選んだのはSeeWeedsによるマスク。1時間にわたる丁寧な施術を受けながら、何故か耳にずっと潮の音を感じていた。明日は帰らなくてはならない。帰りたくない・・・
3泊4日のサルデーニャ島滞在… そこでは、ゆっくりした時間の流れに身を任せて、できるだけ「何もしない」をしようと思った。目くるめくような芸術・文化と歴史を見せつけられたイタリア。その余韻が、サルデーニャの光と海に、とろりと溶けて、ゆっくり後ろへ流れていった。やはり地上の別天地
・・・
小林実・悦子 |