ヴェルリー城で挙式をされたI&M様よりこのようなメールをいただきました。

「小説家にとって自分が死ぬこと以外はすべて題材たりうる」とある作家がいったそうです。私(夫)は別に作家ではありませんが、これを座右の銘のようにして、人生の一瞬一瞬を大切にするために心にとどめています。なぜ海外挙式を選んだかと訊かれたら、私がもともとヨーロッパ文化特にフランス文化に興味があったこと、妻も旅行好きだったこともあるとはいえ、結局はこの考え方につきると思います。どんな人間にとっても結婚式と新婚旅行は思い出深いものであるに違いありません。しかし、私たちは自分たちの結婚式に、「異国の地の人たちと交流し、土着の文化と接して、それを取材(勉強)し自分たちの生きる糧にすること」というテーマを付け加え、それを実現することで、自分たちの人生にとってさらに意義深いものにしたかったのです。

 

この私たちの希望は、リージェンシー・グループのオフィスに伺ったときから現実味を帯びてきました。担当してくださった長妻氏は海外挙式に関しきわめて該博な知識の持ち主で、興味深い話がたくさんうかがえました。結局、私の当初の希望通りフランスで、そしてフランスの中でも長妻氏が強く推し、妻も同様だったヴェルリー城で挙式することにしました。

 

6月1日に式を挙げるため、5月末に成田を発ったのですが、直前までとにかくばたばたしていて、ようやく実感がわいてきたのはシャルルドゴールに降りたった後でした。10時頃まで明るいパリの夜長を楽しんだ翌日、私たち二人と、近隣のホテルに滞在した親族を、ヴェルリー城近辺の村オビニからタクシーが迎えにきてくれました。

 

到着してみると、景観はとにかく美しいの一言。敷地内に広がる広大な林、野原のみずみずしい緑の中に、中世の昔から続く歴史をその白亜の壁に刻んで、慎ましく、しかし重みのある端正さを備えてシャトーは聳立しています。外部から城へと続くドライブウェイから臨むと、その端然たる姿を磨き抜かれた鏡のような湖面がきれいに上下逆に映して、自分たちが目の当たりにしている光景が現実のものとは思えませんでした。
城についてすぐ、幸運なことに、式を司っていただく伯爵とフロントですれ違うことができました。伯爵はきわめて多忙でいらっしゃるので、滅多にないことだと説明してくださったのは、コーディネータの渡辺さんです。品があって優しい、よく気がつく女性で、その操るフランス語の発音はきわめて美しい。私たちはこの方に都合3日間、本当によくしていただきました。

 
 

城についてすぐ、渡辺さんから式の説明がありました。シャトーは一般公開もされているのですが、観光客は入れないというチャペルの中で式は執り行われます。ヨーロッパの式ですから、新郎新婦が宣誓文を読み上げます。私は蛮勇をふるって、大学時代に第二外国語で選択したというだけのフランス語で宣誓することにしました。伯爵にもわかる言葉で宣誓したかったのと、私はこれも自分に対する挑戦だと受け止めてしまった(稚気満々たる)面があります。妻の宣誓文は、むろんというか、日本語です。

 

その日の晩、シャトー入り口のレストランで、親族全員に、パリではなかなか食べられないような、ソースにコクのあるフランス料理が振る舞われました。一品一品が念入りに作られていて、美味でした。近くの席で食事していた一般客のおじさんにフランス語の発音を親族全員で教わったりして、長い時間をかけて食べたはずの西欧の夕食も、食べ終わってみればあっという間でした。
さて、夕食後、寝る前が私にとっては本番でした。宣誓文をなめらかにしゃべれるよう、頭にたたき込まねばなりません。宣誓文のコピーをあらかじめいただいており、一部発音に自信がないところに渡辺さんのアドバイス(発音記号とイントネーション)を書き込んでいます。これを何十回となく口ずさんで、最終的には完全に暗記しました。

 

前日は湿気のある風が吹いて不安になったときもあったのですが、当日の空は圧倒的なまでに晴れわたっていました。前日にも増して、ふんだんな陽光を照り返すヴェルリー城は輝くような美しさでした。今回の結婚式の旅でフランスはいくつかの貴重な僥倖を私たちに与えてくれたのですが、この惜しげもない快晴がその最初のものでした。オビニからルイヴィトンとおぼしき純白のパンツを穿いたおしゃれなスタイリストがやってきて、渡辺さんの通訳で妻の意向を微に入り細にわたってくみつつ、鼻歌を歌いながら実に楽しそうに、妻の髪の毛を結い上げてくれました。妻はこの非常に凝ったヘアスタイルをいたく気に入っていました。

 
 

衣装を着付けて、いざチャペルへ移動です。妻は活発なのですが意外と小心なところもあるので、ちょっと緊張した面もちでした。私といえば、着慣れぬ衣装を着けて、フランス人のカメラマンに写真を撮られながら館の階段を下るのがひたすら照れくさかったのを覚えています。

 

さて、式が始まるときに二番目のすばらしい幸運が訪れました。たまたまシャトーを訪れた観光客の三人の親子が、渡辺さんの誘いを快諾してくれ、参列してくれたのです。
一人でチャペルの中で待つ私のところに、妻が義父にエスコートされてきました。私に妻の手を渡す際、義父は「よろしくお願いします」と小さな声で私にいったのですが、妻は結婚するということを実感がともなったのはこのときだったようです。
伯爵が聖職者の出で立ちに身を包み、誓約文書を厳かな声で読み上げつつ式を進めていくのを、背後に構えた渡辺さんが逐次訳していきます。いよいよ宣誓の段になり、「傍らの女性を妻として迎えるか?」という質問に私が Oui と答えるのをきいて、渡辺さんがにっこり笑ってくださいました。そのあと、私は我ながら完璧と思えるなめらかさでフランス語の宣誓文を読み上げました。ただし、そのあと義理の両親のために日本語でも宣誓文を読み上げたのですが、フランス語に比べひどく早口になり、「喜びも苦しみも分かち合い」というべきところ、「苦しみも苦しみも分かち合い」と宣してしまい、何とも先行きに不安の残る門出になってしまいました。もっとも、緊張したその場では、私をのぞき、日本人全員がその誤りに全く気づきませんでした。

そのあとも、妻が私の右手に指輪をはめたたのにこれも誰も気づかなかったり、いくつかハプニングはありましたが、伯爵の丁寧な、しかし手慣れた進行を持って式はつつがなく(?)終わり、チャペルの入り口で私たちは参列者からフラワーシャワーを浴びました。うれしいことに、飛び入りで参加してくださった三人のフランス人親子が、Felistation! (おめでとう!)といいながら私たちを抱擁し、フランス式に祝福してくださいました。一番小さな娘さんが私たちに接吻する前にひどく恥ずかしがっていたのをよく覚えています。現地の人たちと文字通りふれあうという目標が、最高の瞬間に達成されたことになります。フランスで挙式してよかった、と心の底から思った瞬間でした。(このフランス人の家族とは今でもメールで交流があり、彼らも写っている結婚式の写真を共有しました。)

庭で写真を撮った後、伯爵と祝宴の食事をともにしました。伯爵はアメリカに長くいらしたことがありきわめて流ちょうな英語を駆使できるのですが、懸命にフランス語を操ろうとする私に辛抱強くつきあってくださいました。人格に厚みのある、伯爵という称号がまさにぴったりの気品あふれる紳士で、実業家としてもやり手でいらっしゃいます。とても聞き上手で、私たちが日本のことをしゃべってもしっかりと聞き耳を立ててくださいます。シャトー内のスケールの大きいエピソードを、話術巧みに話してくれ、楽しい時間を演出してくださいました。シャンパンのコルクを抜く前に、”This is the most beautiful sound in the world.”としゃれた一言をいい、ボトルのおしりをつかんで注ぎ口をグラスの奥へ差し込み、美しい手さばきでシャンパンを注いでくださいました。

 
 
 
 

式の後、親族はパリに帰り、私たちはシャトーの敷地内の森を散歩したり、テニスをしたりしてめいっぱい楽しみました。式の終わった直後に精力的に遊び回る新郎新婦は珍しいらしく、渡辺さんはタフだとあきれて――ではなく、感心していました。

 
   
 

その翌日、渡辺さんたちと別れてシャトーを離れるとき、私たちがどれだけ去りがたい思いをしたか、筆舌に尽くしがたいものがあります。私たちは緑が好きで、ヨーロッパの田舎のかわいらしい町(オビニのような)が大好きです。逆に、パリはほこり臭く、あまり肌に合いません。私たちにとってヴェルリー城は、結婚式の思い出をのぞいても、およそもっとも居心地のよい、最高の場所なのです。私たちは数年の間に、できれば赤ちゃんを連れて、この場所を再訪する決意を固めました。

 

シャトーを去った翌週、南仏をドライブし、様々な土着の文化にふれ、これも素晴らしい体験を積みました。長妻さんが選んでくださった南仏アヴィニョンのホテルは建物が瀟洒で、到着したその日に結婚を祝うとてもおいしいシャンパンが振る舞われるなど、サービスも最高でした。帰りの飛行機の中で日本を訪れるフランス人の青年と仲良くなり、東京の下町を案内して、彼がフランスに帰った今も、メールでのやりとりがあります。またフランスを訪れることになったら必ず会おうと約束しています。とにかくこの上なく充実した、結婚式と新婚旅行でした。

 
 

こんな素晴らしい思い出をつくるのに、すべてを段取りよくセットアップし、演出してくださったリージェンシー・グループ並びにヴェルリー城の方々には心から感謝しています。海外挙式を検討されている方は、結婚式を挙げる以外にテーマを決めて、リージェンシー・グループを頼られるとよろしいかと思います。

I&M
 
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