ドブロブニク・ガーデンウェディングで挙式をされたA&K様よりこのようなメールをいただきました。

海外結婚式は反対でした。親を呼ぶのも一苦労だし、もともと結婚式は家族や親戚のために挙げるものだと思っていましたから。
それに「クロアチア」なんて聞いたこともない国を持ち出されても…というのが最初の印象でした。私のパートナーは海外旅行が趣味で、方々の出会いのなかで何十カ国をこなしてきた旅行玄人衆から「クロアチアはいい!ハネムーンでいくなら絶対にあそこがいい!!」という話を何人もから聞きつけ、我々の将来の門出に、「クロアチア」という全く無縁の国を選んできました。

 
   
 

海外挙式の不安は親兄弟友人も含めて皆が口にしました。お金もかかるし、ドレスがないから手持ちしなきゃいけなかったり、よくわからない言葉で誓いの言葉を唱えさせられたり、チップなんて面倒な文化もある。英語でお祝いの言葉を言われても実感はないですし、よくわからない場所で人生はじめての経験をさせられ、周りに安心できる人もいない。不安は尽きません。デメリットは数えていけばいっぱいあります。安心と家族のためを考えるのであれば、それは日本以上の場所は世界中どこにもないのだと思います。

 
 
 

でも一点ここだけは、という感じですが「人生に二度ない経験」という結婚式に「人生に二度味わえない空間」というスペシャル感が架かる時、思い出は確かに究極的な輝きを見せました。今まで他人の結婚式は10回も20回も通い詰め、結婚式の項目も暗記できるほどみていますし、2次会の馬鹿騒ぎの楽しさも十分に味わいつくしてきたつもりでした。でも結婚式を「2人のためだけに」という点で純粋に突き詰めてみると、確かにクロアチアでの挙式は他に比類のないものでした。それまでの苦労をすべて忘れさせてくれるくらいの(実際ほとんどリージェンシーさんにお任せなので実は大して苦労もしてないのですが)、インパクトでいえば人生の瞬間最大風速、という感じです。

 
 
   
 
   
 

挙式中はもうなにがなんだかで、促されるままに椅子に座ったり、宣誓の言葉や誓いのキスを粛々とこなし、指示されるままにポーズを決めて何百枚という写真を撮られます。ドレスとタキシードそのままの姿で世界遺産の街に繰り出してみれば、数百年の時を刻む鐘の音に迎えられながら観光客たちの祝福の眼差しの中で、石畳の回廊を踏みしめます。何百の国々からきた何百の人々から思い思いに祝いの言葉を受けたり握手を求められ、ラピュタの古都にでも紛れ込んだかのような路地の先はこのまま現代から遠ざかってしまうんじゃないかと思える茫洋とした海と夕日が広がっています。朝日と夕焼けがいっぺんに出てきたような騒動のなかで、ドブロブニク特有の絢爛と静謐の狭間にもまれながら、式は終わりを告げます。

 
 
   
 
   
   
 

そして喧噪から離れ、部屋に戻り、その姿のままでベットに横たわります。突然水を打ったような静けさの中。いまでも一番好きな時間を切り取るのなら、実は式の最中よりも「終わってからの時間」なんです。会場の片づけも、参列者への配慮も、疲れた体で2次会に引きまわされることもありません。2時間の挙式・撮影をこなした後に、家族も仕事も友人も一切何もないぽっかりとした空間に、2人だけ。しかもここは「アドリア海の真珠」、バルコニーからは夕日が世界を真っ赤に染めて、なにもかもが吸い込まれてしまいそうです。海には数々のヨットが夕暮れ時を過ごし、彼方には海にせり出すように城壁を構えた古都が見えます。海が凪いで、ふたりでほーっと力を抜いて、まるで時がとまったかのような空間。

 

私たちはそのまま普段着に着替えて、街に繰り出しました。日はすっかりおちて、暗がりのなかをランプの灯下の軒先で、童話に出てきそうな木製のテーブルに座ります。細路地の階段を仰ぎ見ると、先ほどまで自分達が喧噪の中心にいたメイン通りが同じようにざわついた人だかり。ただ一本入った細路地の僕らのテーブルは、まるで世界から忘れられたかのような静かな空間。ワインを傾けながら、その街で一番というパスタを食べ、世界から切りだされたその場所で、自分と相手の存在を慈しみました。この時間、この場所で、新しい門出が祝われたことが、人生においてどれほど恵まれたことであるかをただ体の芯からじわりと感じました。パスタと妻と私だけの時間は、人生の見晴らし台のような空間でした。もしかしたら自分は死ぬ瞬間に思い出すのはここなのかもしれない、そう思いました。

 
   
 
   
 

ちょっと感傷的に過ぎる文章になってしまいましたが、クロアチアには何か特別なものを感じます。挙式以外にも2週間ほどクロアチア各地を旅行していました。意外なほどに観光資源には事欠かず、なぜ今までスポットがあてられてこなかったのかも不思議なほどの国でした。特にプリトヴィッツェの自然遺産は天国のような場所で、最も印象深いところです。帰国後も何度も夢に出てくるほど、心動かされました。また、クロアチアの方も非常に親切で、何度も声掛けられておすすめのスポットの案内をしてもらったり、多く払いすぎた場面でお金を戻してくれることもありました。ザグレブ空港は首都とは思えないほど小さく、目の前に公園が広がり、私自身の体験でいえばニュージーランドと似ていました。自然観光地が多く、こじんまりしているけれども、貧しくはなく人々の気質も安心でき、気の抜いた旅行ができる、という感じです。

 
   
 
   
 

旅のコーディネートは、リージェンシーさんの場合は「自分たちの行きたい所を決める」ということが唯一の作業かと思います。私たちもメールで行きたい場所と日程だけを伝えて、あちらからいただく行程・ホテル・エアチケットに対して「これはいい」「ここは変えてほしい」という要望を伝えるだけで終わりました。日本での式場手配すると半年かけて毎週ミーティングを繰り返しているような形ですが、逆にパッケージ化しておらず選択の幅が自由な分、今回の挙式準備は本当に手間いらずでした。家族を呼ぶ場合にはまた色々と調整が必要になるのかもしれませんが。

 
 
   
 
 

最後に、「アドリア海の真珠」と呼ばれる街は、実際のところ想像していたような浮ついたものではありませんでした。15年ほど前には戦火に遭い、砲弾が撃ち込まれ、石壁は黒く焼け焦げました。今でこそ飾りとしての美しさを誇る城壁は人々の命を守るために必要なものでしたし、その役目を果たして見る影を失った古都は一時「危機遺産」のリストにも名前を連ねました。ただその復興のために力を尽くし、その威容を再度つくりあげたクロアチア人たちには強い誇りを感じました。何人かのクロアチア人と話す機会があったのですが、「世界で一番美しい国」と自信をもっていましたし、高額の税金に文句を言いながらも国としての美しさには強い意思のようなものを感じました。そういった歴史や人々の想いがこもった場所で、自分の岐路となる式があげられたことは、非常にありがたいことだと思います。「ここで」挙式をしたことが、自分の人生に新しい縁をつくりあげてくれましたし、日本以外に故郷というか何か大事な気持ちを呼び起こしてくれる場所ができたことはとても貴重なことなのではないかと思います。

 

ちょっとした思いつきでの挙式を実際に形にしていただいたリージェンシー・グループの方々、特にサルヴァトーレ山田様には感謝の念に堪えません。本当にありがとうございました。素晴らしい旅でした。

A&K

 
 

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